病院名の由来

出会いと別れ
責任と緊張感
私が獣医師として歩き初めた原点

どうしてメッシュなのか

メッシュ動物病院のメッシュって何なの?」とよく人から聞かれることがあります。
「メッシュ」とは院長である私の愛犬の名前からきているのです。

私の母校である宮崎大学では、5年生の時に臨床系の研究室に所属する学生は「病院当番」といって大学付属の家畜病院で臨床実習をするのですが、メッシュは私がはじめて担当した患犬なんです。そう、私にとっては記念すべき患者さん第1号なんです。

ゴールデンレトリバーのメスで生後8か月、はじめて会ったメッシュは全身ハゲだらけのみすぼらしい犬でした。当時はゴールデンがブームになる前で、「ゴールデン何とかってどんな犬だろう」っと思ったのを今でも覚えています。

メッシュは難治性の全身性毛包虫症とそれに付随して起こる細菌性の膿皮症にかかっていました。現在では比較的効き目のある薬がありますが、当時は「ダニカット」という農薬を薄めて薬浴するくらいしか治療法がありませんでした。毎日の投薬、毎週1回の薬浴を4か月近く続け、ハゲだらけの毛並みがなんとかゴールデンらしい美しい毛並みに徐々に変わっていくのを、担当した獣医師の卵として誇らしく思っていました。(ただ、メッシュの場合治療をやめてしまうと再発してしまうため、本当に完治したのは、3歳になってからでした。)

別れの覚悟から突然のパートナーに

ようやく、ゴールデンらしい毛並みが戻ってきたため、入院していたメッシュは退院する運びとなりました。
4か月の間、メッシュのほぼすべての世話を任されていたため、別れは非常に辛いものになるはずと覚悟をしていました。でもそうはならなかったのです。退院の段階になった時、本来の飼い主さんが突然「メッシュは自分のところにはいらない」と言い出したのです。

お話を伺うと、メッシュの飼い主さんはブリーダーで、メッシュは繁殖用として購入されたとのことでした。全身性の毛包虫症は遺伝的傾向があるので繁殖には不適格です。つまり、繁殖に使えないのならその犬もいらないという人間のエゴ丸出しのことがメッシュに起こったのです。そのお話を聞き、すかさず飼い主さんに向かって「私に是非譲ってください」っと申し出ました。その時の私が学生で、アパート暮らしで大型犬なんか飼えるような環境ではなかったことなんて何も考えていなかったんですね。たまらなくメッシュと別れたくなかった、ただそれだけで判断したんだと思います。

飼い主さんもメッシュが継続して治療していかないと再発してしまうことは考えたみたいで、私の申し出を引き受けてくれました。そして晴れてメッシュは私の飼い犬になったのです。

飼い犬というよりは私の大切なパートナーでした。学生時代そして獣医師となっての勤務医時代、やっぱりこういう仕事をしていると動物の死というものに直面することが多々あって落ち込んだりやり切れなさを感じたり辛いことがあるんですけど、そういう時その笑顔(私にはそう見えるんです)で私を支えてくれたのです。
メッシュに話すと心が軽くなるような・・・そんな存在でした。

そんなメッシュに体の不調が起きたのは、メッシュが11歳の時でした。

涙の別れと感謝の気持ちが歩みの原点

体中のリンパ節が腫れ上がってしこりになっていました。病名は「リンパ腫」。ゴールデンには多い腫瘍なんですけど、まさかメッシュがかかってしまうなんて思ってもいませんでした。比較的抗癌剤の効きやすい腫瘍で、メッシュも抗癌剤治療で一時はほぼ体中から腫瘍がなくなったんですが、その後再発、そのまま亡くなってしまいました。平成13年6月8日のことでした。
メッシュを火葬にして荼毘にふしたとき、涙があふれさめざめと泣いてしまいました。人前で泣くことのない私が涙したことに、妻が驚いていたほどです。それくらい私の中でメッシュという存在は大きなものだったのです。

動物病院を開院するにあたって、いろんな病院名を考えました。オーソドックスに「古賀動物病院」、地名から「みいけ動物病院」、少しひねって「菜の花動物病院」などなど・・・。ただやっぱり私にとってはメッシュは特別な存在なんです。メッシュを受け持った時から獣医師であることの一歩を踏み出したような気がます。
大切な命を預けられているという責任と緊張感、素晴らしいパートナーと出会えたときの喜び、そしてやがて訪れる別れという悲しみ、生命の尊さ儚さ。そのすべてを忘れないためにも、私が獣医師として歩き初めた原点としてメッシュという名前を病院名につけました。
もちろん、ここに来てくれるどんな動物たちにも、メッシュ同様、家族のように接していきたいとの決意も込められています。

このページにメッシュの写真を使いました。メッシュの写真の中でも好きなものの一枚です。なんとなく微笑んでくれているような気がして・・・。でも、この写真、メッシュが亡くなる1週間前くらいに撮った写真なんです。
最後までQOL(クオリティ オブ ライフ)を保てるよう、最善を尽くす。獣医師としての、というよりチーム医療としての動物病院の大きなテーマの1つです。

メッシュ動物病院という名の動物病院は日本でただ一軒、どうぞよろしくお願いします。